AquaVision 2026:世界的な不確実性の時代に、持続的成長を支えるレジリエンス、データ共有、そして協働の重要性が高まる
飼料メーカーであるスクレッティングは、バリューチェーン全体をつなぐ特別な立場にあります。親会社であるニュートレコは動物栄養分野における世界的リーダーであり、両社は増加する世界人口に食料を届けるために、”Feeding the Future”という共通の使命のもと、世界の食料システムの中核を担っています。
AquaVisionの最大の特徴は、世界各地の水産養殖業界を代表するリーダーたちを一堂に集める点にあります。さまざまな生産地域や養殖魚種に関わる関係者が集まり、業界全体に影響を与える重要なテーマについて議論を深めます。
水産物需要の増加、地政学的な不安定化、飼料原料を巡る課題、気候変動、さらには人工知能(AI)の活用拡大を背景に、今回の中心的な問いは次のものでした。
「水産養殖業界はいかにして将来にわたる持続可能性を確保し、成長を続けることができるのか。」
この問いに向き合うため、2日間にわたる会議ではバリューチェーン全体から多彩な講演者が登壇しました。司会を務めたのは、Global Salmon InitiativeのCEOであるソフィー・ライアン氏です。
初日はスタヴァンガー市長のトルモド・ロスネダル氏による歓迎挨拶で幕を開け、その後、ニュートレコCEOのバスティアン・ヴァン・ティルバーグが開会のスピーチを行いました。
バスティアンは、食料安全保障の実現におけるニュートレコとスクレッティングの役割について次のように述べました。
私たちに必要なのは、より高い壁を築くことではありません。必要なのは、より長期的な視点と、より多くの協力です。そして、その解決策の一部は、まさにこの会場にあります。」
「食料システムの発展には、知識やイノベーション、協働の自由な共有が欠かせない。求められるのは分断ではなく、長期的な視点と連携の強化であり、その答えは業界関係者が集うこの場の中にある。」
世界の政治情勢をどう乗り越えるか
初日は、地政学とその水産養殖業界への影響をテーマに、多くの示唆に富んだ講演が行われました。
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クリンゲンダール研究所のレム・コルテウェグ氏は、参加した経営者やCEOに向けて次のように述べました。
「実際に最前線にいるのは皆さん企業です。皆さんがどのように互いに関わり、議論を形成するかは、世界の首都や政策決定の場で何が語られているかと同じくらい重要です。」
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『The New China Playbook』の著者であるキーウ・ジン博士は、中国が新たな経済時代に入りつつあることや、その発展の特有のパラドックス、今後の展望について語りました。
「もはや中国企業の海外進出を従来のモデルで考えることはできません。研究開発は欧州、サプライチェーンは中国、財務機能はドバイや香港というように機能を分散させています。これはグローバルな再構築であり、中国は常に一歩先を見据えています。」
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チリ元財務大臣イグナシオ・ブリオネス氏は、関税制度の変化が今後も続くと指摘するとともに、ラテンアメリカが持つ成長機会について説明しました。
「私たちが目にしているのは経済ルールの一時的な変化ではなく、恒久的な転換点です。しかし、より分断された世界だからこそ、ラテンアメリカには大きな機会があります。」
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コロンビア大学ロースクール教授で『The Brussels Effect』の著者でもあるアヌ・ブラッドフォード氏は、欧州が軍事力や技術開発の自立を進めることで地政学的・貿易上の課題に対応できると説明しました。
「欧州は自らの安全保障を自ら守らなければならないという認識を持つ必要があります。競争力回復は存在に関わる課題です。不確実性と挑戦の中には大きな機会があります。」
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キーウ・ジン氏、イグナシオ・ブリオネス氏、アヌ・ブラッドフォード氏によるパネルディスカッションでは、中国、ラテンアメリカ、欧州それぞれの視点から議論が行われました。参加者は、地域ごとのアプローチは異なるものの、「機動性(Agility)」「多様化(Diversification)」「協働(Collaboration)」の重要性で一致しました。
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三井物産の石本浩章氏は投資家の視点から講演し、「食のプレミアム化」に注目。水産養殖産業への参入を検討する際の2つのモデルとして、①サーモンやエビのように管理された環境で生産し世界市場へ販売するモデル、②より手頃な魚種を地域で生産・消費する「鶏肉モデル」を紹介しました。
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特別講演者として登壇した元米国務長官アンソニー・ブリンケン氏は、レム・コルテウェグ氏との対談の中で、グローバル外交がますます複雑化していると指摘しました。
「30〜40年前なら、数人の外相や大統領に電話をして問題を解決できました。しかし今はあらゆる課題に多くの利害関係者が存在します。離陸時に関係者をまとめられなければ、着陸は失敗するでしょう。」
また、不確実性の時代における事業運営について次のように述べました。
「求められるのはレジリエンスです。冗長性や複数の選択肢、リスクヘッジが必要になります。確かにコストはかかりますが、大きな変化を見誤った際の損失よりははるかに小さいでしょう。」
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スクレッティングのメイ・ヘレン・ホルメ氏は、「変動性が新たな常態となりつつある今、水産養殖業界は効率性の最適化だけでなく、より強靭な産業基盤を構築する方向へ転換する必要がある」と強調しました。そのためには、安全で多様な飼料原料、精密栄養、イノベーション、そして長期的な協働が不可欠だと述べました。
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Omarsaのサンドロ・コグリトーレ氏は、エクアドルのエビ産業が遺伝育種、飼料、技術革新によって高い競争力を獲得した一方で、今後の成長を脅かすのは生産能力ではなく、保護主義や衛生基準の政治利用、不十分な通商協定であると指摘しました。
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Cermaqのスティーブン・ラファティ氏は、過去数十年におけるサーモン産業の浮き沈みを振り返りながら、持続可能な成長を再び軌道に乗せるためには業界全体の協力が必要だと訴えました。
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最後に、ピアニストのフェリペ・ゴメス氏はクラシック音楽の歴史をたどりながら、規律、奉仕の精神、情熱の重要性を語りました。
「私たちは皆、卓越した存在(Virtuoso)になるよう求められています。」
水産養殖は、おそらく最も予測が難しい産業の一つです。業界の成長を実現するためには、こうした変動性をいかに低減していくかが極めて重要です。
業界の未来を形づくる先進的なイノベーション
AquaVision 2026の2日目は、テクノロジーと人工知能(AI)に焦点が当てられ、デジタル技術がどのように事業成長を支えているのかについて議論が行われました。
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McKinseyのアンダース・ミルデ・ゲンデムショー氏は、水産養殖業界がAIによる価値創出に非常に適した業界であると指摘しました。一方で、データは共有されて初めて価値を生み出すと強調しました。
「データはすでに持っています。まず解決したい重要課題を一つか二つ選び、それを現実のものにしてください。データをつなぎ合わせ、価値を生み出せるという確信を持つことが重要です。」
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AKVA Groupのオーレ・クリスティアン・シヴェルツェン氏は、自然を完全に制御することはできないものの、管理することは可能だと述べました。
「水産養殖業は、おそらく最も予測が難しい産業の一つです。業界の成長を実現するためには、変動要因を減らしていくことが極めて重要です。」
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Rynan Technologiesのブライアン・グエン氏は、東南アジアにおけるAIを活用した予測型エビ養殖を紹介しました。
「予測は、それに基づいて意思決定し、行動に移せて初めて価値を持ちます。重要なのは画面上にデータを増やすことではなく、適切なタイミングで正しい判断を行い、より良い魚やエビを育てることです。」
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アフリカの農業リーダーであるスザンヌ・ンジェリ氏は、アフリカにおける課題と可能性について語りました。
「2050年には世界の4人に1人がアフリカに住むようになります。増加する人口を養い、尊厳ある雇用を創出し、強靭な食料システムを構築しなければなりません。その未来を一人で築くことはできません。」
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Aker QRILLのマッツ・ヨハンセン氏とケネス・フレドリクセン氏は、原料問題について警鐘を鳴らしました。
「原料不足や価格高騰は一時的な問題ではありません。これが新たな前提条件となりつつあり、業界はその準備を始める必要があります。」
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Longyang Freshのアンディ・シュー氏は、中国青海チベット高原のトラウト養殖場の事例を紹介し、SNSやデジタルツール、AIが消費者の購買行動を大きく変えつつあることを説明しました。企業はこうしたデジタル接点を通じて、自社の価値をより分かりやすく伝えられるようになると述べました。
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OptoScaleのスヴェン・コルスト氏は、事後対応型の養殖から、AIを活用した予測型養殖への転換を提唱しました。
「私たちは次世代のためにこの産業を築かなければなりません。最適を目指さないのであれば、その使命を果たしているとは言えません。」
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閉会講演では、スクレッティングのマールテン・ベイルCEOがAIで生成したアバターを活用し、2日間の議論を総括しました。デジタル変革の推進者である同氏は、養殖現場を訪問した際に感じる課題として、データ共有への消極性を挙げました。
「持続的な進歩は、バリューチェーン全体で安全かつ継続的にデータが共有されることによって実現します。個々が独立して最適化を目指す考え方から脱却し、つながることで持続可能な成長を加速させましょう。」
「持続的な発展のためには、バリューチェーン全体で信頼性の高いデータを安全に共有することが欠かせません。個々が独立して最適化を目指すのではなく、データと知見をつなぎ、連携を強化することで持続可能な成長を加速させるべきです。」
今年の講演を通じて、いくつかの共通したメッセージが繰り返し語られました。
いまや世界は、ショックや混乱が日常的な経営環境の一部となり、かつての「平常時」に戻ることはありません。グローバル化による自由な交流に代わり、さまざまな境界線が引かれ、また引き直される世界へと変化しています。そして、その中で市場や機会へのアクセスを左右するのは、人や組織との関係性です。
また、水産養殖業はこれまで以上に政策の影響を受ける産業となっており、食料安全保障は国家安全保障の重要な要素とみなされるようになっています。そのような環境下で共通の目標を実現するためには、バリューチェーン全体での協働がますます重要になります。
そして業界を問わず、高いレジリエンス(強靭性)を備え、優れたパートナーシップを築いた企業こそが、今後の競争を勝ち抜くことになるでしょう。
会議の締めくくりに、スクレッティングのマールテン・ベイルCEOは、こう呼びかけました。
「今回の学びを振り返り、業界全体の意思決定に生かしてほしい。そうすることで、私たちは共により良い未来を築くことができる」
AquaVision 2026は、世界の政治・経済の視点と、水産養殖業界の実践的な知見を融合させることで、水産養殖バリューチェーン全体における戦略的な対話と意思決定を促進する場としての役割を改めて示しました。